和田山古墳群(能美古墳群)

能美丘陵地は加賀平野の真ん中に忽然と在った丘陵地です。
以前紹介した秋常山古墳和田山城はこの丘陵地を利用して造られたものです。
能美の丘陵地は古くから古墳が多く存在し、3~7世紀の古墳時代全般に渡る物で、方墳・円墳・前方後円墳・前方後方墳・周溝墓等々、多種多様な古墳が存在しています。しかし、戦後の市街造成によって大きく掘削されて多くの丘陵が失われています。地元の方なら地名で分かると思いますが、三道山・九谷・寺井町の大部分は丘陵を掘削してできた新興地です。もしそのまま残されていれば、貴重な古墳地帯として、計り知れないものがあったと思います。それでも、現在は60程の古墳が残っています。
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その中で比較的多くの古墳が残されているのが和田山古墳群になります。
確認済みが23基、掘削されて消滅したのが4基で、19基が国指定史跡として現存しています。前述の和田山城はこの古墳群(8・9・11・14号墳)を利用して造作されたものですが、古墳・出土物の調査が進められており、3年前(平成23年)には23号墳から出土した須恵器(壺・高杯)から「未」「二年」の文字が再確認されています。共に年数を表すのではないかと推測されていますが、この文字発見は須恵器に記されたものとしては、これまで堺市・野々井古墳出土の6世紀初頭の破片が最古と云われていましたが、それを更新したことになります。
23号墓は昭和52年(1977年)に見つかった5世紀末の円墳ですが、周溝から整然と並べられた46個の有蓋高坏と器台に乗せた脚付壷が発掘されていました。、葬祭礼に使われたと思われますが、このような須恵器を並べたまま埋められた例はないそうです。また円墳内からも50以上の須恵器が発見され、須恵器の円墳という特殊なものになっていました。

それにしても、30年以上前の発掘品が今頃と思われますが、発掘当時から文字じゃないかと云われていたんですが、旧寺井町時代は町の規模が小さく博物館に学芸員がいなかったという情けない理由でした。市町村合併により能美市となって、これからの調査発表に期待がもたれています。
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和田山の最初の調査発掘は昭和26年(1951年)に始まっています。広場から和田山城の犬走りを右手に観ながら入ったところから、古墳群が始まります。直線的に10基ほどの円墳が並んでいます。先頭に位置し、最初に発掘調査が行われた1号墳(鈴塚)は円墳で6世紀前半の築造とされています。高さ5m、直径24m。
この古墳からは北陸では唯一の六鈴鏡や管玉・ガラス玉他、粘土棺からは10歳前後の少女の下顎が出ています。六鈴鏡は銅鏡に六個の鈴が付いたもので、祭礼などに使用されたものです。このことから、巫女として育てられていた少女の墓と思われます。和田山古墳の中では唯一と云っても良いのですが刀剣類が出土しないという特徴もあります。
この時代の巫女は王族や豪族の親族から選ばれ、幼い頃から他の人から離されて修行を受けたとされています。この墳墓の下には竪穴式住居の跡があったことが確認されており、住居をそのまま墳墓にしたようです。先祖の古墳群の入り口に当たることから、先祖の霊を慰める巫女として、この地に育てられていたのかもしれません。
高床式倉庫跡を挟んだ隣の一回り小さい2号墳(鏡塚)(高さ4m、直径19m)からは、四神四獣鏡(四神は方位の青竜・百虎・朱雀・玄武、四獣は四神の変形や想像上の鳥獣が描かれています。)の銅鏡と共に鈴付銅訓(どうくしろ、腕輪)が出ており、同じく巫女の墳墓と思われます。しかし短甲・剣・槍・矛も出土し周溝には須恵器が置かれていました。巫女とは断定できませんが、巫女の墓である秋常山2号墳にも剣が置かれていましたから、こちらは大人の巫女だと思われます。
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3号墳のように和田山最大の円墳(周溝直径45メートル)のように未調査の物や4・6号墳のように盗掘で原型が変形したものがあります。6号墳は土橋が3か所あったりでおなじ円墳でも各々特徴があります。秋の紅葉時も良いですが、桜が多いのでお花見がてら順番に観て歩くにはもってこいです。
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和田山の北東端から憩いの広場を挟んだ所に小山があります。この山の名前が末寺山別名・城山。ちなみにこの山の北に県道を挟んで、山があるんですがそちらも末寺山といいます。こちらの別名は寺山
寺山は元々の単独峰で南面が四分の一程掘削されていますが、和田山には観られない前方後方墳2基と円墳12基が現存しています。機会が在りましたらこちらも次回紹介したいと思っています。
城山は名前の通り、本来は和田山と尾根を同じにした和田山城の東北端にあたる搦め手に当たりました。つまり末寺山ではなく和田山の一部になるわけです。この小山には単独の全長56mの前方後円墳があり「和田山5号墳」となっています。
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山上にある前方後円墳で和田山では一番の規模を誇ります。また、他の能美古墳群を合わせるとちょうど中間点に当たります。意識して中心点を選んだのではないかと云われています。ここからは後円部に埋葬施設が二つあり、双方に甲冑をはじめ鉄製の武器武具が多数、更には鋤鍬、鏡、貨幣など、装身具など多数の副葬品が出ています。武器武具の発掘数は北陸随一で、王族王者の墳墓として注目されています。
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この5号墳は、以前紹介した秋常山古墳との関連を指摘されています。北陸最大の前方後円墳の秋常山1号墳は4世紀末~5世紀前半の造成と云われていますが、この5号墳は5世紀後半とされています。5号墳秋常山1号墳は尾根の端同志で相対するようになっており、古墳の向きも同じ北東に向いており、形式を秋常山に倣ったのではないかと想像されています。更に造成時期が同じ頃とされる秋常山2号墳の埋葬施設は粘土郭に木棺を納め更に粘土で固めるという造りが似ているそうです。
秋常山1号墳は発掘調査は行われていませんが、レーダー調査や金属探査で埋葬施設が二つあることが確認されており、構造も似ているのではと想像されています。
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前述しましたが、この和田山古墳群と隣の末寺山古墳群を合わせて、昭和51年(1975年)に「和田山・末寺山古墳群」として国史跡指定を受けており、平成11年(1999年)秋常山1.2号墳「秋常山古墳群」として国史跡指定を受けていました。そしてH23年ですが、これに市街の寺井山古墳群、秋常山の近くの西山古墳群を追加して一括し「能美古墳群」として名称変更を行っています。
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和田山1.2号墳の鈴付銅訓や四神四獣鏡や管玉などは京都国立博物館に常設展示されていますが、今年(H26)里帰り展示が行われていました。
能美古墳群からの発掘品の多くが、和田山・末寺山古墳群の入り口に建つ「能美市立歴史民俗資料館」に展示されています。特に5号墳出土の甲冑や長剣は興味深いものがありますし、和田山の古墳状況や和田山城の再現ジオラマなどもあります。入ると解りますが、展示物は貴重なものも多く、なかなかの展示解説が見られます。ところが、この設備・展示物で入館無料。そのうち有料になるかもしれませんが、古墳群を訪れた際にはお忘れなく。ついでに、物見山の能美市立博物館にも展示があるんで、二つを観るとばっちりです。
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旅行日 2012.10.04 11.18

和田山古墳群


和田山5号墳

この記事へのコメント

  • がにちゃん

    貴重なものが出てきているのですね  
    2014年12月28日 22:27
  • 家ニスタ

    資料館が入場無料なのはいいですね。
    だいたいが、日本の博物館は入場料が高すぎますね。
    撮影禁止、なんてケチなことをいうところも多いですし。
    フラッシュをたかない限りは、展示品にダメージも与えないでしょうし、ばんばん撮影OKにすればいいと思うのですが。
    2014年12月28日 23:06
  • つとつと

    がにちゃんさん
    能美の古墳群は期間の長い間に何種類もの古墳があるのと、越の国と呼ばれた時代はこの辺りには、財部・道君・江沼の三豪族がいたようです。この辺りは三豪族の境界に当たる地ですが道君が有力視されています。道君は天智天皇の皇子・施基皇子(光仁天皇の父)に正室を輩出していますから、それなりに実力を有していました。能美市はそれほど大きい市ではありませんが、河田山・物見山など200以上の古墳があって、歴史好きにはたまらない場所なんですよ。

    家ニスタさん
    そうなんですよ。資料館や博物館の入場料は高いんですよ。フラッシュやライトはまずいけど、撮影は良いと思うんですけどねえ。。やはり、無料化や安価にするのは子供達に対しても、歴史を好きにさせる第一歩になるんですけどねえ。
    ここは展示物は、無料とは思えないなかなかのものですよ^^
    2014年12月29日 11:42

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