赤瀬那殿観音

赤瀬から牛ヶ首峠のダム湖に沿った道を採らずに、赤瀬の里で鳥居を潜って山中に向かいます。
鳥居の前に大きな案内板がありますが、この道は那殿観音への参道になっています。

以前にもご紹介していますが、加賀には那谷寺という寺院があります。白山開創の泰澄上人が千手観音像を納めて「巌屋寺」としたのが始まりとされています。その後、花山法皇によって西国三十三観音の全てがここにあるとして、一番の那智寺、三十三番の谷汲寺の一字ずつを採って「那谷寺(なたでら)」と改名しています。
奇岩が織りなす遊仙峡に堂宇が配された寺院建築は菟橋神社で紹介した寺院建築の名工の山上善右衛門
寺院や神社の紹介が多い僕ですが、加賀で是非観て欲しい寺院はと聞かれれば、金沢ではなく最高の景観と建築を有する小松の那谷寺だと思っています。

この那谷寺の奥の院と伝承されているのが、今回の「那殿観音」になります。正式名は「赤瀬那殿観世音菩薩」
一説には那谷寺の発祥地ともされています。
白山開創の泰澄上人が白山から下山後、持仏であった黄金仏の観世音菩薩像をこの巌谷に納めたのが始まりとされています。
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昭和40年代に赤倉林道が出来るまでは、那谷寺からは真直ぐには徒歩でしか来れず、赤瀬からの参道が一般人の唯一の参道でした。現在も狭い林道で冬季はほとんど通行止めです。おかげでとはいってはなんですが、僕も数年に一度くらいしかこの辺りには来ていませんでした。

赤瀬の村落から林道というか参道を進むと、西国三十三か寺を模した石仏が道端に置かれています。杉木立からの木洩れ日の中で、観音像の石仏は地元の深い信仰心を思い起こさせ、幽玄な世界を感じさせます。

参道の途中に馬頭観音と子安地蔵の祠がありますが、側には猛々しい神馬像があります。
近くの碑文によれば・・・昭和20年(1945年)に粟津観音講の片岩慈雲尼の見た霊夢から相談を受けた斉田月友尼が共に、参籠中の法師文子に本願を仰ぎ、昭和27年、加賀の名匠・都賀田勇馬が製作したとなっています。
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推測になってしまいますが、名前からして粟津温泉の大王寺関連から依頼された老舗旅館・法師の関係者に本願して彫刻家・都賀田勇馬に依頼作製したというもののようです。ちなみに、この時の霊夢は盗難にあった木造仏の観音像が現れて、自分の身代仏を奉納して欲しいというものでした。
それが泰澄の納めた黄金仏かは不明ですが、この参道の神馬像と共に那殿観音の拝殿に勇馬作の多羅観音像・泰澄上人坐像が納められています。この他にも多くの木像が拝殿に納められていますが、これらを観られるのは年に一度、毎年5月の最終土日に御開帳が行われているそうです。

多羅観音は16歳の少女の姿をした観音様です。ということは盗難にあった仏像は観世音菩薩像ではなかったということでしょうか。。
ちなみに、都賀田勇馬(つがたゆうま1891~1981)は、彫刻家として帝展・日展を受賞し石川県の工芸指導員や日展の審査員を務めた人物です。小松市内に多くの作品がありますが、以前紹介した安宅関の富樫・弁慶像首洗池の義仲主従の嘆きの像弁慶謝罪の地の像他があります。昭和22年に日展特選を受賞しており、26年には仏門関係のハニベ岩窟院を開創しており、那殿観音にこれらの像を納めた頃は全盛期ともいえます。

その他にも参道には三重の石塔もあります。形状は那谷寺の三重の塔によく似ています。那谷寺は木造ですが、石造も杜の中の雰囲気によく合います。
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那殿観音への入り口となる石段の登り口には大きな泰澄上人の銅像が建っています。泰澄は越前・麻生津(あそうづ現・福井市浅水町)の豪族の次男として生まれ、最初は法澄と名乗り、越前五山(白山・日野山・越知山・文殊山・蔵王山)の登山・開創によって名を高め、20歳で文武天皇から国家鎮護の法師に任命され、各地の開山・開創・伝教活動を行っています。その間も皇室の信頼が厚く、元正天皇の病気平癒、疱瘡流行の収束によって、天平9年(737年)称徳天皇から正一位・大僧正という僧侶の最高位に任命され泰澄と改名しています。北陸の多くの開山・神社仏閣の開創に係っており、越の大徳と呼ばれています。
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ちなみに、泰澄が白山を開創したのは養老元年(717年)35歳とされています。
越前五山に白山が含まれる理由ですが、現在の白山は加賀の国とされていますが、当時は加賀国は存在せず加賀は越前の一部であったためです。加賀国が成立以降は三禅定道が示すように三国併有でした。また白山が加賀国になったのは江戸期で、江戸期前半までは越前・加賀・飛騨の三国で係争が続いていました。
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その泰澄が足跡を残した地ということで何度か足を運んではいるんですが、ゆっくり観たのは今日が初めて。。
以前も拝殿の下までで、予定もあってすぐ戻っていましたから。。。
石段の前に車を停めましたが、急で長い石段を観て、底の高いサンダル履きの娘は同行を拒否。。車で携帯でも見てるということで、、(内心、携帯は使えないんだけどなあと思いつつ、娘を残してレッツラゴー)(戻ったら、やっぱり娘はブス~~っ、そりゃそうだ、山の中に置き去りにされて、携帯は使えず、その間一台の車も通らず人も歩いてない、イタチが走って行ったそうな
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娘を置き去りにしたお気軽なお父さんは、フウフウ言いながら300段の石段を登って行きました。
石段の途中にもたくさんの石仏や地蔵さんが置かれています。
更に登ると大きな岩の下をくりぬいて潜れるようになっています。胎内巡りの一種ですねえ。頭を低くして潜って観ましたが中は真っ暗、出口を出ると明るさにホギャーと云いたくなる気分。出口には法水堂と呼ばれる堂内に水がちょろちょろ。。長い石段を登って来た身には甘露甘露^O^万病に効くと昔から言い伝えられているそうです。
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そして、後ろを振り仰ぐと目に飛び込んで来るのが那殿観音拝殿(本堂)です。その姿は那谷寺の本堂と同じ姿かたち。崖に貼りつくように造られた懸造りと呼ばれる形態です。たぶん、那谷寺の本堂を模したと思われますが、資料がなくはっきりしません。建立年とかご存知の方は教えていただけると幸いです。
那谷寺の本堂より規模は小さいですが、高度な位置にあり屋根の上にせり出す岩が更に威圧感を増しています。遠目には那谷寺の本堂より、こちらの方が眼を惹きつけると思われます。ちなみに奥の院はこの上部の岩の左手にあります。まだまだ先は長い。
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以前まではこの拝殿奥の院には崖に横向きに這うように伝って登らなければならず、子連れだと危険だし、高所恐怖症の二人は問題外。時間も読めなくて登っていなかったんですが、今回は登る気満々でやって来た僕
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ところがいざ数年ぶりに登ってみると、参道が整備されて登り易くなっていました。これなら、嫁さんや娘でも大丈夫^^V拝殿から眺めると、自分の登ってきた長い石段や法水堂が小さく見えます。当然、扉は閉まっていますがガラス越しに内部が観られます、毎年5月最終土日に御開帳が行われ、この堂内で読経と講話が行われます。来年以降に時期が合えば訪れたいと思っています。
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拝殿の左隅から山上に向かって参道が続いています。この道にもいくつかの石仏が観られます。多少の起伏がありますが、進んで行くと崖の一部に造られた頑丈そうな扉は見られます。これが、那谷寺・那殿観音奥の院になります。
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更に奥に進むと大きな岩壁に人一人がやっと屈み込んで抜けられる穴があります。「くもっろ岩」と呼ばれている岩潜りです。日頃の行いが悪い者が潜ろうとすると、壁に耳が引っ着いてしまうと云われています。後ろめたい物を抱える僕ですが、恐々潜ってみましたが大丈夫。ちょっとホッとしました。

この岩を潜ると拝殿の上に懸る岩の先が観られます。ちょうど人一人が座れるくらいの大きさです。昔修験者が精神修養に座禅を組んだと云われていますが、落ちたら一巻の終わりですから、前には出ないようにしましょう。。僕もここまでが限界です。
岩の先には踏み分け道もあり、更に進めるようですがこれ以上はトレッキングや修験者の世界、これ以上待たせると娘が発狂するので戻ることに^^;
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ちなみにこの赤瀬観音山を含めた那谷寺までの山間地は古代からの修験者のメッカになっていました。那谷寺からも500年以上前に修験者が派遣されていた記録があるそうです。また現住職もこの山間にある円行山を中心に修験者として修業をしていたそうです。

帰り道は赤瀬那殿観音から更に奥へと進む赤倉林道を抜けて、以前に花山法皇の伝説地として紹介した菩提町を通って那谷寺経由で家路につきました。

ちなみに赤瀬の参道沿いに流れる大杉谷川の支流や菩提町を流れて那谷寺を流れる那谷川は、円行山を源流の地にしています。円行山は標高470m。僕の走った赤倉林道や菩提町からの安谷林道で、狭い車一台がやっとの道や急勾配の道ですが登ることができます。天気の良い日には山頂から白山の姿や柴山潟や木場潟の遠景が観られます。

また、観音水という名水があることで知られています。
画像のふっくらしたユニークな像は、これまた泰澄上人像と何人かに聞いていましたが、弘法大使像のようです。像の下の「南無大師遍照金剛」は真言宗で唱える一番短いお経です。御宝号(ごほうごう)と云って、空海が唐に渡って密教の法を伝授された際に、師の恵果から与えられた名前です。
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水の味は法水堂より、こちらの観音水の方が美味しく感じました僕^O^
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昨年、観音水まで登った時の画像がありますんで、一旦ですがご覧いただけましたら。。遠くに見える湖は片山津温泉のある柴山潟です(たぶん^^;)
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円行山は前述したように、那谷寺の修行僧が自然智を得るために、山頂付近で修行をしたと云われています。
自然智泰澄上人が山中で体験したという世界観を言います。このため、長くの間、この自然智を求め体得するために、那谷寺の修行僧や修験者がこの円行山を中心に修験道に邁進したとされています。

山頂には、那谷寺の奥の院として祈祷を行う施設として「白山自然智の里・生雲(いくも)」が建てられています。
那谷寺の祈祷行法を受けようとする人や、リラクゼーションのための宿泊施設としてのものですが、立ち寄りのコーヒーやお蕎麦も食べられる施設があります。駐車場は10台ほどしか停められませんが、この駐車場からの眺望も素晴らしいものがあります。 生雲のHP
言い忘れましたが、赤瀬那殿観音は伝承としての奥の院です。公式的には那谷寺円行山周囲全体を奥の院としています。昨年は、生雲は閉園休業中で山頂まで行けなかったのですが、また行ってみたい所の一つです。

旅行日 2015.07.05  観音水 2014.06.06

赤瀬那殿観音


円行山観音水

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この記事へのコメント

  • メミコ

    奥深い所ですね  ツトツトさんのブログはいつもちょっとした歴史書を読む感じなので 自分の投稿している地域SNSブログでは絶対読めない内容に感じ入っています   那谷寺は坂東三十三観音霊場の最後の地 千葉の館山にあり ここにいつかお参りしようと思っているのですが 今回のブログで 那谷寺の意味を知りました

    わたしは岐阜の出身なので谷汲山には子どもの頃 お参りしました

    御山 信仰 お水 自然 こうした各地にある名刹をご紹介くださるのはうれしいです
    2015年07月16日 10:10
  • go

    赤瀬ダムの道は何度か通っていますがいつも牛首峠の方向への道を辿るので残念ながら素通りしています。
    那谷寺へは何度か参詣していますが、赤瀬の那殿観音が奥の院だとは全く知りませんでした、宗教的、歴史的な遺跡や遺物が沢山保存されていて興味が湧いてきました、つとつとさんの記事を見たら一度訪れて見なくなりました。
    2015年07月16日 10:31
  • つとつと

    メミコさん
    メミコさん、岐阜のご出身でしたか。。こちらから岐阜市に向かう際は下道だと156号か157号で向かうんです。やはり156号が多くなってしまうんですが、2.3度ですが157号で本巣経由で行った際に谷汲山の華厳寺に立ち寄ったことがあります。ちょうど桜の時期で美しかった記憶が。
    石川と岐阜が境を接していることを意外に忘れられているんですが、毎年、一度は白山の外周を一周すると良く解ります。西国、北陸、四国の三十三観音は身近に多くあるのですが、坂東は身近になく良く解らないんです。今度、ゆっくり観てみたいと思います。僕は近頃遠出が出来なくて、ついつい近場の歴史になってしまって、ちょっとマニアックになっちゃうんですよ^^;
    メミコさんのブログはどちらなるんでしょう??
    2015年07月16日 14:54
  • つとつと

    goさん
    僕も牛首峠に向かう道は好きですよ。景色を観ながら走れますから^^;赤倉林道は木が覆っていて、まったく周りが観えなくて、圧迫感が半端ないですから。。
    赤瀬の那殿観音は本当に山の中という雰囲気ですが、逆にそれが良くて気に入っています。一度立ち寄って観て下さい。
    円行山の生雲もお奨めの場所なんですが、昨年6月に訪れた時には閉園ということで途中で引き返してしまいました。もし開いていればいうことなしの眺望があります。晴れていると白山も観られます。お奨めの場所ですよ^^
    2015年07月16日 15:04
  • がにちゃん

    良い所ですね 簸ん行きバッチリ  ぜひぜひ行ってみたいと思いました
    奥ノ院 こんな所に・・・ちょっと怖いかな
    2015年07月17日 11:41
  • つとつと

    がにちゃんさん
    那谷寺と併せてみると、よく似た造りや構成も、比較できると思います。那谷寺が修験者の寺ということがよく解りますよ^^
    ついでに、もし営業していたらですが、円行山の生雲に宿泊も合せると最高のコースだと思いますよ^^ いざとなったら、運転手とガイドはお任せください^^V
    2015年07月17日 17:49

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