金沢の森本ICから富山県・福光に向かう国道304号線で、県境を越えて1キロほどを右折すると砂子谷の集落になります。坂道の途中に土地の産土神と思われる神社があります。
日頃、神社や旧跡を見るのが好きな僕は、標柱や歴史看板などを見るとつい急ブレーキを踏んじゃいますねえ^^;今回も石柱の「巨木」の文字に反応してしまいました。
自分の知らない神社に出会うと、後で神社庁を検索することが多いのですが。。石川の神社庁のHPでは小さな神社でも、それなりの由緒や由来が載せられているんですが、富山の神社庁では名前・住所くらいしか載っていないことが多いんです。いつも四苦八苦^^;今回の砂子谷富士社も例にもれず、境内にも案内板もなく、今のところ不明状態です。
とはいえ、鳥居横の標柱「富士社」の揮毫は衆議院議員・綿貫民輔氏。南砺市出身の代議士で、すでに政界は引退していますが、自民党で入閣、国民新党でも活躍していました。
綿貫民輔氏は28歳で倒産寸前の砺波運輸の社長となって、4年間で立て直して上場、現在のトナミ運輸へとつなげたことで知られています。その後、政界入り、自民党幹事長・建設大臣・衆院議長などを歴任、郵政民営化で小泉首相に反旗を翻して、自民党離党の末に国民新党初代代表など。。。南砺市では名誉市民第一号。。
ちなみに綿貫家は歴代・井波八幡宮の宮司の家柄になります。現在の井波瑞泉寺のお隣りで、大きな境内地を誇っています。境内は元々は瑞泉寺・井波城の跡地でもあって、けっこう移行が残っています。機会があったらまたご紹介しますね。
綿貫氏自身も井波八幡宮の宮司の地位にあります。その人が揮毫してるんですから、それなりの歴史と所縁を持つとは思うんですが。。。
富士社の名前からすると、浅間神社系だとは思うんですが、、、
急坂の石段や鳥居・狛犬なども小振りながら凝った作りで、境内も草が払われ、地元の産土神として大事にされていることは窺えます。
狛犬は獅子対獅子ですが、井波の獅子頭に似た頭の形や垂れた耳、口に特徴があります。石川県内でも獅子舞の盛んな津幡町なども井波の獅子頭が多いので僕には馴染み深い顔をしています。 ⇒ 津幡町HP 獅子頭
石柱に表示されていた巨木は、砂子谷の大杉
石段を上がっていくと、二の鳥居の先に拝殿を包むように、枝を張る大きな杉が見えてきます。参道から観るとスマートに見えますが、左敷地に廻ると幹周りの大きいことが解ります。
市指定文化財 砂子谷の大杉 昭和四十七年十月二十日指定
このスギは、スギ科スギ族アシウスギである。アシウスギは京都府の「芦生(あしう)」の地名をとって名付けられたスギで、日本海側の多雪地帯に適応した変種であり、下枝が雪に被われて地につくと、そこから発根して逆立木にになる性質がある。裏日本に多いのでウラスギとも呼ばれる。
幹の周囲は六,八メートル、樹高は二十八メートル、枝の広がりを示す樹冠の径は約二十メートルある。
平成十七年三月二十二日 南砺市教育委員会
日付が二つありますが、文化財指定の昭和47年(1972年)は福光町時代になります。当時は西礪波郡福光町砂子谷でした。平成16年(2004年)福光町を含む四町四村の合併で南砺市になったためです。南砺市はこの砂子谷や前回の土山の他に五箇山や利賀村といった山岳地帯の市ですが、世界遺産五箇山集落や国際演劇祭の利賀村、彫刻の井波・城端などなかなかの注目地区です。
杉は日本の固有種とされており、植林も多いことから、一番身近な樹ともいえます。近年では花粉症の原因としても身近な存在です^^;秋田杉・山武杉・立山杉・天竜杉・北山杉・吉野杉・屋久杉などが有名木材として知られていますが、他にも杉の地方品種は数多く存在します。ちなみに立山杉が示すように富山県の県木は立山杉になります。
元々、前述の様に杉は日本固有種といわれますが、地方の気候風土によって違った特性を持つようになったと云われます。これが数多くの地方品種になったのですが、大別すると二・三種になるそうです。別々の遺伝子が発見されたという話もありますが、学説としては確定していないようですが。。。
杉(スギ)の語源は直木(すぐき)・進木(すすぎ)とも云われていますが、太平洋側の真っ直ぐに伸びる形態の杉がこの名称に当てはまります。オモテスギは樹幹も締まって硬い素材が多くなります。
これに対して、豪雪地帯の日本海側に観られるのが、よく異形の形態と云われるウラスギになります。積雪の重みや強風によって、枝下がりを起こした際に地面についた枝から根が発生するものです。積雪への対応の為か折れ難い代わりに柔軟なしなりを持つ木質になります。
もう一つが両者の中間的存在と言える南九州系の杉だと云われています。水分を好むスギですが劣悪な砂地や岩石帯でも根を張りながら、まっすぐ伸びる強さを持った屋久杉を含む南九州系スギ群です。
案内板に書かれたアシウスギ(芦生杉)というのは、茅葺集落で知られる京都府美山町にある芦生原生林(芦生研究林)にある杉から命名されています。 ⇒ 京都美山ナビHP
枝の湾曲や設置からの逆立ちなど異形の形のウラスギの典型的なモノとしては、このブログでも紹介しています。 ⇒ H26.10.18 五十谷(ごじゅうだに)の大杉
砂子谷の大杉はウラスギ・立山杉の仲間になりますが、樹高28m・幹周6.8m・推定樹齢700年。
豪雪地にありながら下部は真っ直ぐに伸びた姿をしています。地表から5.6m辺りから横枝が大きく繁茂しています。綺麗な下部を見る限り、元は植林され、枝の選定などの手入れを受けていたのではないかとも思われます。
樹勢が強く、文化財指定時には20年間で幹周が1m近く伸びているそうです。山間で人の訪れが少なく、根を踏まれることもないので、これからさらに巨樹になっていくと思われます。
石段脇にも高い杉がありました。幹周は5メートルに満たない、大杉に比べれば比較的若いようですが、樹高は引けを取っていません。この杉も将来は巨木と呼ばれる存在になりそうです。これまた枝処理が施されているようで、北陸では珍しく素直に真っ直ぐな樹形を生していました。
二の鳥居から観えた富山県特有のアズマダチ住宅
旅行日 2019.04.26
この記事へのコメント
tor
神社は由緒を読まないと全く何も分からず…
小さな神社は情報もなかなか見つかりません。
でも思わぬ収穫があったりもします。
ハナショウブ鑑賞に玉名市まで行きましたので
疋野神社へ久々にお詣りしました。
他にもいろいろと…
今週中にはブログで紹介できると思います。
リンクも張らせていただく予定です。
ありがとうございました。
がにちゃん
ご神木ですね まだまだ立派に大きくなりそうですね
まだこもよ
つとつと
曳野神社楽しみにしています。僕も次回は藤五郎の候補者の富樫家の末裔の押野の後藤家跡の神社を書こうと思っています。
つとつと
山の斜面に合わせたようでけっこう急な石段でした。雨降りだったので滑りそうで注意して登りましたよ^^
地表から5mほどは枝切りを施しているようで、こちらでも珍しい真っ直ぐなタイプでした。以前、がにちゃんさんがい行った美山町の杉の名前・アシウスギの仲間になるそうです。美山の杉は一度行きたい場所の一つです。
つとつと
綿貫さんは宮司さんの家ということもあって、平素は穏やかで好々爺然とした方ですねえ。でも気は強かったようですよ。
こちらではトナミ運輸は見慣れた運送会社で、けっこう知名度の高い人です。
tor
本日6月5日「玉名市 疋野神社」アップしました。
https://tor5.blog.fc2.com/blog-entry-612.html
なかなかつとつと様のようにうまく紹介できていませんが…
リンクと引用させていただきました。
ありがとうございました。
藍上雄
杉の種類については、良く知りません、アシウスギの様に、雪の重みで枝が地面につき、根付くと言うのは、初めて聞きました。
つとつと
やったあ\(^o^)/ 後ほど、伺います。疋野神社のお伝説は、以前torさんが書かれていたんで楽しみにしていました。
つとつと
どんな小さな神社や祠にも謂れはあるはずなんですが、神社庁のHPは県によって掲載趣旨が違うので苦労しますねえ。越中国史や地元紙があればわかるんですが、なかなか機会を選んだり、行ったりが難しく忘れた頃にがほとんどになってしまいます。
政治家はその土地の名家や旧家が多いので、そういう関係した場所の資料はあると思いますね。
富士社の狛犬は口以外は似たような形で、両方が宝珠を抱えていますね^^見逃していました^^;通常は片方なんですけどねえ^^;
垂れ下がった耳は獅子舞の獅子頭で井波のものに多いんです。獅子舞が盛んだった地元に育ったせいかこの顔にはなじみが深い僕なんです。
北海道には杉が少ないと聞いています。林業用の植林されたものや太平洋側の雪の少ない杉は真っ直ぐに育つんですが、ウラスギは枝が根づくという変わった特性で、異形の形で圧倒されるものも多いんですよ。そうそう根上りの松もこの仲間みたいなものかも
ミクミティ
小さくてもそれぞれの神社に、地元に根差した歴史がありますよね。政治家の綿貫民輔は有名人です。宮司なのは聞いたことがありました。地元で揮毫を求められるのもよく分かります。
杉の種類の話も興味深く読ませて頂きました。神社にある杉の古木を見ると、ずっと歴史の目撃者だったのだろうと畏敬の念を感じたりします。
つとつと
さすがにブレーキ踏むのは車のない場所ですけどね。。Uターンやバックはよくありますけど^^;
北陸は新潟を含め神社が多く、各集落に一つといった具合にありますから、その地区の歴史や背景を観るには打ってつけな所です。そして御神木は畏敬を込めて観られるものが多く、観ていても飽きることが有りません。
ただ、案内板や由緒書きが無いと今回のようにチンプンカンプンなことも^^
林業用の植林や手入れをされたものは別にして、日本海側の自然杉には異様な形のものが多くあります。長い年月を神の宿る木として観られてきたようです。
yasuhiko
伐採もされず、大切にされて来たんでしょう。
こうした古木、巨木、名木に出合えるのも、
古社巡りの楽しみですね。杉の種類は、
屋久杉、北山杉くらいしか知りませんでした。
雪国に適応した杉があるという事、
なるほどという気がします。
つとつと
関東だとオモテスギが主流で真っ直ぐなものが多いようです。かわりに目が詰まって硬い素材が多いそうです。
北山杉はウラスギの仲間でから派生したと云われています。芦生から派生しているそうです。芦生は京都の山間の美山町にあるんですが関西屈指の原生林の山深い中に、茅葺屋根の集落があるのどかな所ですよ。
北陸の山奥に行くと枝が根のようにのたくった姿の異形の杉が見られます。特に五十谷は絶品です。