宮島峡 川と滝そしてビーナスたち

河合谷の木窪大滝から林道を抜けると、すぐに富山県に入れます。分かれ道を北に行けば、五位ダム経由で宝達山の西麓になりますし、西に向かえば子撫川(こなでがわ)ダムを経由して子撫川に沿って小矢部の町に出られます。子撫川ダムから下流は浸食された川底や川崖で大小の滝が多く観られる宮島峡として景勝地になっています。途中の二の滝付近に宮島温泉郷もあります。

富山県では里山の景勝地を独自に選定して「県定公園」として指定しています。現在は17公園が指定されています。この宮島峡も「稲葉山宮島峡県定公園」として、小矢部市からは倶利伽羅県定公園と共に選定されています。ちなみに稲葉山は子撫川の東方にある丘陵の主峰で、稲葉山丘陵(稲葉山牧野)には小矢部牛の牧場がひろがり、小矢部市街を一望できる景観と動物と触れ合る施設が山頂にある家族連れには打ってつけの行楽地になっています。
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宮島峡には子撫川が織りなす流れと大小の滝が見所なのですが、世界のヴィーナス像が12体が要所に配されています。もちろんブロンズのレプリカやコピーですが。。大滝から林道で行くと、途中の久利須野外緑地広場に3体・林道の丘上に2体あるのですが、今回はパス。。前述の林道の三叉路に立つのが永遠の像と呼ばれるミロのヴィーナス

ミロのヴィーナスは御存じのようにルーブル美術館所蔵の彫像ですが、林の中のブロンズの姿もなかなかですねえ^^10年前にお逢いした時はそうでもなかったのですが、長年の風雪で緑青が目立っていますが、逆になまめかしさを感じます。
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側に立っていた案内板から・・・宮島峡 永遠の像 常盤の庭にたつ永遠の像は、ルーブル美術館所蔵の「ミロのヴィーナス」を象徴としてつくられたものである。
このヴィーナスは、美の女神として、ひろく、世界のひと人に親しまれて来た。原作は紀元前200年頃の作であるといわれ、高さ202cmの大理石でつくられている。
紀元1820年、ギリシャのメロス島にて、島の農夫により発見され、ルーブル宮に収められた。ギリシャ古典期よりあとのヘレニズム期の傑作とされ、胴体から足にかけての典雅な風格、顔貌、頭髪のはなやかな美しさ、全体が流れるよう美しく端正で、豊かな姿は時の流れを超えて、ひとびとに美の極致を投げかけている。


ミロのヴィーナスは数奇な運命で今はルーブルにいます。ミロス島で農夫に発見された際にトルコ官吏に接収される寸前、噂を聞いたフランスが買い取った経緯があります。イスラムでは偶像崇拝は禁止ですから、下手をすれば破壊の憂き目に遭っていたかも。。しかし、フランスでは修復後にルイ18世に贈呈されていますが、その際に左の二の腕と碑文の入った台座が失われています。返す返すももったいない話です。受け取ったルイ18世はルーブルに寄贈しています。
サモトラケのニケ と並んで、ギリシャ彫刻の傑作と言われますが、その人気は永遠の美とは真逆の不完全の美にあると僕は思います。ニケも首や腕が失われていますが、そこに僕たちは想像を掻き立てさせるんですねえ@@
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前述の様にミロのヴィーナスの前を左に行くと五位ダム経由で宝達山に行けるんですが、今回は家路に向かうということで右に。。林道を抜けると目の間に広がるのが子撫川ダム
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子撫川ダム 由来・・・子撫川ダムの上流部は河積が狭まく下流部は屈曲甚だしいので従来しばしば大災害を蒙っていました。一方下流流域耕地は夏季渇水期には例年水不足に悩まされており、加えて周辺都市への人口集中増加と地下水位の低下による水道用水の需要増大とその確保に対して抜本的対策の実施が強く望まれていました。
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このような状況に対処するために、富山県は子撫川総合開発の一環として昭和47年小矢部市森屋地内に多目的ダムとしての子撫川ダムの建設に着手しました。ダムサイドの地質は新第3紀中新統の砂岩と泥岩で構成されておりほぼ水平層をなしています。このような地質では、ダムの型式は水圧による荷重を広く地山に分散させるロックフィルダムが最も適しています。
提体に必要な原石は正方6kmの石川県津幡町木ノ窪地内に求め昭和53年6月、完成を見ました。
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        緒元・・・型式・傾斜遮水壁型ロックフィルダム 堤頂高・45.0m 堤頂長・224.0m 堤体積・551,000㎥ ダム天端高・110.0m 総貯水容量・6,600,000㎥ 有効貯水容量・6,000,000㎥ 集水面積・31.8k㎡ 貯水面積・0.7k㎡ はんらん防止面積・250ha 渇水補給面積・220ha 上水一日供水量・60,000㎥/日 総事業費・60億円


庄川と河口を同じくする急流・小矢部川の最大の支流が子撫川になります。上流部に農業用水・治水を目的に農林産業省(現在は富山県運営管理)が造った五位ダムがありますが、富山県が同じく農業用水・水道用水の確保に造ったのが子撫川ダムです。地盤が弱い北陸では3層で両岸壁に荷重を散らすロックフィルダムは多く採用されています。大きな石を積み上げたダムの壁面はなかなかの景観を醸し出しています。
今年の夏は雨が少なく例年よりも、ダム湖も水位が低くなっています。
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この子撫川ダムにもヴィーナスがいます。クリストフ・ガブリエル・アルグラン作 水浴する女・別称ヴィーナス
個人的に僕が一番気に入っているヴィーナス像です。曲線美と複雑な三つ編みの髪が秀逸@@

宮島峡のヴィーナス像の側にはそれぞれに宮島峡を唄った歌碑があります。
水浴する女ヴィーナスの側には・・やま峡の こなでの湖に 乙女行つ かりがね遠く 月さえわたり
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ルイ15世王朝期、アルグランは無名作家で義兄の伝手でサロンの作品展示を受けて造った作品です。期待されていなかかったためか大理石も筋や染みだらけの石が与えられていました。
宮廷サロンで展示された無名作家の彫像は審査員全員の絶賛を浴びます。ドゥニ・ディドロ(百科全書の編纂で知られ、美術評論家・作家)は「美しい、美しい、崇高な姿。近代人が作り上げた最も美しく最も完成された女性の姿だ」と絶賛、友人に、「今まで一度も名前を聞いたことが無かったこのアルグランは、水浴するヴィーナスを仕上げたばかりだが、大芸術家すらこの作品を賞賛している。」と書き送っています。
ルイ15世はこの作品をマリーアントワネットと対立して有名な側女・デュバリー夫人に贈っており、ルヴシエンヌ城庭園に長く置かれましたが、フランス革命で革命軍に接収されルーブル美術館に納められました。

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子撫川ダム排出口に降りる道の脇で携帯電話用のアンテナのある岡上にも一人のビーナスがいます。
ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル作 「泉」 オルセー美術館所蔵の有名な絵画作品から抜き出た彫像です。裸婦画の一方の完成形とも云われた作品で後世の画家にも大きな影響を与え続ける作品です。この作品の10年ほど前に描かれた「水からあがるヴィーナス(ヴィーナス誕生)」の完成形とも云えるもので、似たようなポーズなのに陰影や壺からの水の流れなど、こうも変わるかという作品

アングルは、グランド・オダリスク(横たわるオダリスク)、ヴァルパンソンの浴女他など数多くのジャンルの作品でも知られる1800年代を代表する画家です。奨学生時代の21歳でローマ賞古典部門グランプリを獲りますが「皇帝の座につくナポレオン1世」など作品発表ごとに何度も酷評を浴びていますが、その度に移転と修行に出ては復活を果たし、フランス新古典主義の最後の旗手と云われ、最終的にパリに戻った際には英雄として迎えられていました。彼の作品はだれしも美術史や図鑑で観たというものが多いはず。。
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宮島峡の見所には大小の滝があるんですが、その中でも一・二・三の滝が人気のスポットになっています。その中でも最上流で湾曲して広い川渕から流れ落ちる三の滝の景観はなかなかの見所です。今回は川岸からの画像です。この夏は水量が少なく中央の成長した草葦が邪魔をして落滝は半分しか見られませんでしたが、水道局側の土手や家屋近くに登れば全体像も観られます。今回は約半分以下ですが水量があれば、画像の倍以上の流れ落ちが間近で見られます。
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この滝の手前の広い渕は、静かな水面に見えることから「竜宮渕」と呼ばれています。

案内板から・・昔から湖・渕には伝説が数多く生まれ、ふるさとの歴史とともに伝えられてきた。この竜宮渕には、竜神が棲みひとびとの命を守る霊渕であると古くからいい伝えられ、土地のひとびとは篤くこれをうやまい、また旱魃(かんばつ)の時には雨乞いの祈りをしたという。以下略

この竜宮渕の竜神は地元の深い信仰を受けていて、渕の岸辺に祠堂が祀られています。車で侵入すると方向転換が出来ませんから橋を渡った先の駐車場に停めると便利です。
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現在、この竜宮渕に佇むのは、コペンハーゲンのランゲリーニュ海岸の人魚姫(リトルマーメイド)
今夏のような水量が少ない時は台座が見えるほどになりますが、逆に水量が多いとお腹あたりまで水が来て、本当に水しぶきの中にいる人魚のように見えます。

ちなみにコペンハーゲンの人魚姫は、もちろんアンデルセンの「人魚姫」が原作です。ビールの醸造で有名なカールスバーグの二代目が人魚姫のバレエ劇に感激して製作依頼をして、1913年寄贈したものです。作者はエドヴァルド・エリクセン。ちなみにモデルはバレエ劇のプリマドンナでしたが、裸は拒否して顔だけのモデルに。首から下はエドヴァルド・エリクセンの奥さん・エリーネ・エリクセン。ちなみにこのエリーネさん、年配の方はご存知だと思いますが、E・H・エリック、岡田真澄兄弟の母方の伯母さんに当たるそうです。この兄弟の父は日本人・母はデンマーク人、生まれはフランス・ニース、太平洋戦争で日本に帰国しています。
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画像二の滝上流の堰堤滝
竜宮渕から子撫川が大きく蛇行して流れてくるのですが、この後は山間を縫って流れてきます。
この山間の蛇行を過ぎると川幅も大きくなって、幾つかの堰堤を越えて流れると、次の大きな滝が二の滝になります。
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二の滝、別名・子撫川のナイアガラ。水量が少ないので、下草が繁茂して今は左の方に偏っています。水量が多いと全面に流れ落ちてなかなかのド迫力です。
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この二の滝は深い森に囲まれていますが道路側は駐車場から降りると遊歩道が整備されています。
実はこの二の滝にもヴィーナスがいます。さて、上の画像の中にいますが、どこにいるでしょう。。アップにしても解り難いかも。。。嫁さんは眼鏡をかけていなかったのもありますが、崖上から見ていた娘も見つけられず。。

二の滝の歌碑・・せせらぎに やわはだ匂う 乙女らし きぬぎぬのすそ 花くれないに

「美しい尻のアフロディテ」作者不詳 酷い和名ですが、正式名はカッリピージェのヴィーナス(美尻のヴィーナス) ナポリ国立考古学博物館所蔵
原作は古代ギリシャの青銅製とも云われますが、現在の大理石彫像は古代ローマ(BC1世紀後半)のもの、16世紀に頭部がバラバラで再発見され、18世紀後半にブルボン家のファルネーゼ・コレクションと共にナポリに送られ、カルロ・アルバチーニによって修復されたものです。
この作品、実は後ろから観ると衣装をまくり上げて、お尻を丸出しにしているんです。ですからこの題名で、、、後ろから見るべき彫像と云われているんです。でもここでは美しいお尻は全く見られませんね ちょっと残念
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二の滝と一の滝の間には河畔に沿って遊歩道があります。川の流れを観ながら、木陰を進めますから、夏には最適、できれば上流の二の滝から歩いたほうが楽かも、一の滝からだとひたすら登りになっちゃいます。
我が家は車だったので、僕は途中までで駐車場に、車は急カーブと降りの道。。。のんびり森林浴で歩きたかったなあ。。。
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一の滝に行くには二カ所入り口があります。ひとつはトイレと大駐車場ある下流から岩場を歩いて行くもの。
そして、上流の真上に位置して崖面の道を降りていくもの。。ここには坂道の道路の傍らにヴィーナスがいますから、車で降りで来ると真正面で待ってくれています。登りだと見逃してしまう位置。。
このヴィーナスについては見たことが有るような無いような。。横から観た方が美しいのですが、画像が消えていて、正面だけで申し訳ありません。

案内板から・・・宮島峡 紺碧の像  ギリシャ神話の「水瓶で水をくむ美しいヴィーナス」(バチカン美術館蔵)を象徴としてつくられたものである。
このヴィーナスは、ギリシャのアルゴスの王様の娘、ダナイットの美しい姿が表現されている。アルゴス地方は、昔から乾燥した地域として知られている。心のやさしいダナオスの娘たちはいつも遠くの泉まで水を汲みにかよった。
海・川・泉の神であるポセイドンが、それを見て、かわいそうに思い三叉の戟(ほこ)で大地をうつと、滾々と泉が湧きでて流れた。ダナオスの娘たちは、その泉のそばで幸せにくらしたという。
神秘 優美 幸福
この由緒にねがいをこめて、一の滝の水辺にたてられた。


案内板では、ギリシャ神話とローマ神話を足して二で割った感じなので・・・ギリシャ神話から・・・
ギリシャ神話では理不尽で首を傾げたくなる話が多いんですが、これもその一つ。。元はと言えばアルゴスの地が乾燥したのは、ヘラとポセイドンの領有争いが原因でした。裁定で負けたポセイドンが腹いせに旱魃を起こしたのが原因でした。困ったダナオス王は50人の娘に水場を探すように命じます。
水場を探して旅をしていたダナオス王の娘・アミューモーネは鹿を射ようとして、誤ってサテュロス(半身半獣の精霊)に当ててしまいます。怒ったサテュロスはアミューモーネの姿に欲情して襲い掛かります。そこに通りかかったポセイドンが三叉戟を振るってサテュロスを追い払い、彼女の願いを聞いて三叉戟を投げつけた地から三つの泉が湧き出て来たと云われます。後にヘラクレスがヒュドラーを撃退したレルネーの泉はこのひとつになります。その後はギリシャ神話らしいのですが、原因を作ったポセイドンとそのせいで水を探す羽目になったアミューモーネの二人は一晩を共にしてナウプリオスを産みます。このペロポソス半島にあるナフプリオ(ナウプリオス)はギリシャがオスマントルコからの独立戦争時の首都にしていた地です。
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一の滝は水量のある時は前面から岩場に向かって二段で流れ落ちますが、今回は水量が少なく降りずに上からだけに、暑い夏ということで家族連れが水に入って泳いでいました。一の滝の川床は岩場になっているので、幾つものポットホール(甌穴)が観られます。これだけのポットホールが間近で観られるのは貴重な存在です。画像をアップしてもらうと解りますが、川床や岩場のあっちこっちに丸い穴が観られますが、これがポットホール。
ポットホールは激しい水流によって流れた石が柔らかい部分に入って拡散して削ってできる穴です。ポットホールの名所は全国の急流や海岸にけっこうあるのですが、ほとんどが水底で流れなどで解り難いのですが、ここでは眼の前で観られます。ポットホールを観たいときは夏場、勇壮な一の滝を観たいときは水量ある時期がお薦めです。
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このまま子撫川沿いに下って、国道手前の前田秀継夫妻の墓所近くを右折すると弁慶岩や日本代表のヴィーナス・弁天様があるんですが、寄り道のために一の滝からしばらく行ったところで右折で山間に右折。。12のヴィーナスの内の半分をご紹介しましたが、他のヴィーナス達にはモナリザ・ボティッチェリのヴィーナスの誕生・前述の弁天観音など有名作品のコピーですが、また機会があったらご紹介しますねえ^^/

小矢部にはこの他にも、公共建物のメルヘン建築物が35カ所などもあって、なかなか面白い町です。メルヘン建築も全部見たかったんですが、まだ半分ほど。。。なのに、保育園の建て替えで8カ所ほど無くなってしまうそうです。どうせならメルヘン建築にして欲しいところですが、通常建築費用の2~5割増しで予算が厳しいそうで通常建築になってしまう方向なんだそうです。せっかくメルヘンの町で名が売れていたのに。。。。

旅行日 2018.08.12

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